チヌ(クロダイ)のフカセ釣りでは、水面に浮いたウキの動きを見てアタリを取る方法が主流です。
しかしマイナスの浮力のウキを用いて、ウキを沈める「全誘導沈め釣り」という釣法も存在します。
ウキが完全に海中に沈むという特徴的な釣り方ですが、この釣りならではのメリットもあります。
今回は全誘導沈め釣りに必要な仕掛けや、釣り方を解説します。
仕掛け概要
通常のフカセ釣り仕掛けと異なる点は、
①ウキ止め・シモリ玉が不要であること、
②マイナス浮力のウキを用いること
の2点です。
全層沈め釣りのメリット
風の影響を受けない
通常のウキでは風が吹くと表層に流れが発生し、その影響をモロに受けます。
特に横風時は仕掛けの位置がズレてしまいますが、ウキと道糸を海中に沈めればその影響を回避できます。
悪条件下では非常に有利な仕掛けです。
ウキの抵抗が無く、喰い込みが良い
通常の水面に浮いているウキでは、チヌが餌を咥えるとウキの浮力が抵抗となります。
しかし全誘導方式のこの釣りではウキ止めを使用していないため、引っ張られると道糸がスルスルとウキを抜けていきます。
そのため余計な抵抗が掛からないため違和感が少なく、喰い込みを良くすることができます。
そのままチヌが走り出し、穂先にガツンとアタリが出る瞬間がたまらないです!
沈め釣り用ウキ
水面に浮くウキの号数は、0,G2,Bなどの表記がありますが、沈め釣り用は最低でも00号以下の沈むウキを使用します。
号数の表記は沈むスピードに応じて設定されています。
この釣りでは、以下のようなウキを使用できます。
大征黒(00・沈め)
号数は00号もしくは「沈め」があります。
00号よりも「沈め」の方が若干沈むスピードが速いです。
自重は18.1gとある程度の遠投も効き、扱いやすい重さです。
剛黒(00・沈め)
大征黒と同じく00号と「沈め」の2種類の号数があるウキです。
重量が22.6gあるため遠投性に優れていますが、00~0号竿だとこの重量のウキを投げるには少し柔らか過ぎます。
0.6号以上の竿で扱うのがおすすめです。
プログレスチヌスタンダード(S~F)
S(スロー)、M(ミディアム)、F(ファースト)の3段階で沈むスピードが分けられています。
流れの緩い港内や水深が5m以下の場所ではSがあれば十分です。
横風や流れが速い場所ではMやFの出番です。
プログレスチヌハイグレード(S1~S6)
スタンダードよりも沈むスピードが細かく分けられ、S1~S6の6段階あります。
S(スロー)=S1~S2、M(ミディアム)=S3~S4、F(ファースト)=S5~S6に相当します。
状況に応じて微妙な浮力調整をしたい方におすすめです。
大知遠投60(00・000)
穴径が割と大きく糸抜けが良いため、特に深場を狙う時に重宝するウキです。
鱗海ZEROPIT(00)
16g強の自重があるため遠投も可能なウキです。
ラインを切らずにウキを交換できる仕組みとなっているため、半誘導仕掛けへの切り替えも瞬時にできます。
以上のような浮力設定が各ウキにありますが、バランサーを用いれば沈む速度を速くする方には調整が可能です。
その他仕掛け
全誘導の沈め釣りにはウキ止め糸およびシモリ玉は不要です。
他に必要となるのは通常のフカセ釣りと同じくウキストッパー、サルカン、ガン玉です。
ガン玉は基本的にG5~G7程度の軽めのものを使用します。
ウキ自体が沈んでいくため、重いガン玉を使用しなくても仕掛けが浮き上がることはありません。
潮が速かったり、底付近を手返し良く探りたいときにはガン玉を足します。
釣り方のコツ
ウキの位置をイメージする
ウキを沈めるこの釣りでは、当然ウキは目視できません。
そのため投入して仕掛けが馴染んだら、ウキがどこにあるかイメージして大体の見当をつける必要があります。
まず投入時はウキの着水点をよく見ておき、その周囲に撒き餌を打ちます。
ピンポイントに打てなくても、大体半径2~3mの範囲を狙えばOKです。
アタリを待っている間は仕掛けが流されていきます。
その間に仕掛けがどこにあるかは、回収時に仕掛けが浮いてくる位置から大体の潮の速さを読み、予測して追い撒き餌をします。
仕掛けを馴染ませる
この釣りはウキ止め糸でタナを取っていないので、仕掛けが今どの程度の深さにあるか判断するのが難しいです。
投入後にオープンベールで道糸を送っていると、糸が出て行かなくなるタイミングがあるのでそこで仕掛けが馴染んだと判断できます。
水深5m程度であれば「沈め」の浮力では1分も経たずに刺し餌は海底まで届きます。
ただ、ウキ沈んでいくにつれて道糸の抵抗を受け、だんだん沈下しなくなります。
そして完全に海底までは到達せず、水中で浮いた状態になります。
そのためウキにかかる重力で海底付近の深さまで沈め、ハリスに打ったガン玉で完全に着底させるイメージで仕掛けを馴染ませます。
アタリを取る
チヌのアタリは穂先から出た道糸を見て把握できます。
道糸がピンと張り、穂先がグイッと曲げ込まれたらアワセを入れます。
喰いが渋いと感じたらオープンベールにして待っても良いです。
この場合はアタったら糸がスルスルと出ていくので、慌てずにベールを返してアワセを入れればOKです。
最後に
このウキを沈める釣り方は、ウキが見えないため難易度は上がります。
しかしこの方法により悪条件を克服できるため、習得しておけば対応できる状況の幅が広がり釣果を伸ばせます。
どんな状況でもチヌを釣りたい方には大きく役立つ釣法です!